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第86回 “高気密・高断熱住宅の上手な住まい方”
〜自然換気が期待できない分、計画換気で環境維持 冷房時は除湿機、暖房時は加湿器併用で効率アップ”〜

  最近の住宅は、高気密・高断熱仕様が主流になっています。都市公害による住環境の悪化や敷地の狭小化、生活パターンの変化などから、かつてのような開放的な建物では快適で安全な暮らしが望めないからです。

 ただ、高気密・高断熱住宅は隙間から外気が侵入することがほとんどありませんから空調効率がよく、夏は涼しく、冬は暖かな居住空間が実現しやすいといった利点がある一方で、自然換気が期待できないので的確な換気を怠ると効果が半減するばかりか、健康面での不安の原因に発展しかねません。高気密・高断熱住宅で快適に暮らすには、計画換気は不可欠です。高気密・高断熱住宅の利点をより高めるには、夏の冷房時に除湿機を、冬の暖房時に加湿器を併用したり、観葉植物を効果的に活用したり、断熱性能のネックであるアルミサッシの窓にカーテンや障子を追加したりといった工夫も必要です。

 そこで今回は、高気密・高断熱住宅の上手な住まい方について考えてみました。

エネルギーロスの少ない、省エネ住宅を実現

 かつての日本の住宅は、「夏をもって旨とすべし」といわれていたように、高温多湿な時期をどのようにすれば快適に過ごせるかということを最優先した、開放的な建物でした。ところが、最近は騒音などの都市公害による住環境の悪化や敷地そのものの狭小化に加えて、生活パターンも変化していますから、開放的な建物では快適で安全な暮らしが望めません。このため、特に都市部での住宅は高気密・高断熱が必須条件になっています。つまり、構造や間取り、仕上げ材、設備機器が総合的に機能しているだけではなく、高気密・高断熱仕様で良好な室内環境を維持していなければ良い住宅とはいえないのです。

 高気密・高断熱住宅とは、適切な断熱工事が施されている建物のことです。断熱工事は、建物の柱と柱の間とか床下、天井裏にグラスウールやプラスチック系の断熱材を充填して外気の侵入を防止する内断熱工法が一般的ですが、最近は柱や屋根の下地材の外側に気密ボードと断熱材を張って建物全体をスッポリ覆う外断熱工法も普及し始めています。

 どちらの工法にも長所と短所があり、一概に優劣をつけることはできません。要は、正しく施工されているか否かの問題です。適切に施工されていれば、夏は涼しく、冬は暖かく、しかも外部の騒音に悩まされることのない快適な省エネルギー住宅は実現します。

 ただ、こうしたエネルギーロスの少ない高性能な高気密・高断熱住宅は、隙間からの外気の侵入がほとんどありませんから、住まい方を間違えると効果が半減するばかりか、社会問題になっている化学物質過敏症(シックハウス症候群)など健康面での不安の原因にも発展しかねません。高気密・高断熱住宅の特性を生かすためには、計画的な換気に心がけるなどの対策がどうしても必要なのです。

気候のよい季節は、窓を開放した方が快適だ

 高気密・高断熱住宅は、隙間から外気の侵入がほとんどない建物だといいましたが、外気の侵入が少ないということは見方を変えると自然換気が期待できないということです。ところが、室内の空気は人が居るだけでも汚染が進みます。室内の空気汚染は、屋外からもたらされるものと思いがちですが、実はほとんどが室内で発生するといわれるほどです。しかし、高気密・高断熱住宅は外気の侵入、つまり自然換気がほとんど期待でませんから、まず最初に実行しなければならないことは適切な換気です。

 快適な室内環境を維持するためには、人が生活していれば当然排出される呼吸やホコリ、臭い、湿気などの汚れを外に排出し、新鮮な外気を取り入れたり、適切な湿度調整が欠かせません。窓を全面的に開ければ短時間でクリーンな空気に変えられるでしょうが、高温多湿の夏や寒さが厳しい冬には、せっかく快適に保たれている室温や湿度が急激に変化してしまいますから不快だし、エネルギーロスにもなります。

 このため、こうしたデメリットを極力少なくして快適な室内環境を維持するためには、どうしても24時間、常に微風で換気する、計画換気システムを導入しなければなりません。エアコンを動かすと風が出てきますから換気をしていると思っている人がいますが、これは勘違いで、多くのエアコンは単に冷気や暖気を出しているだけです。つまり、室内の空気を循環しているだけですから、エアコンを作動しているときにも計画換気は必要です。

 ただ、こうした計画換気が必要なのは、空調しなければならない窓を閉めきっているときの話です。幹線道路に面しているとか付近に工場があるため騒音や煤煙が気になる環境なら、年間を通して外気と遮断しなければ快適な室内を維持できないでしょうが、通常の住宅地の場合は、気候のよい季節には窓を大きく開け放してさわやかな外気を取り入れた方が快適です。しかも、風通しをよくすれば結露が解消するでしょうから建物のためにも良く、経済的です。高気密・高断熱住宅といえども、窓をどんどん開けて自然と仲良くすることは大切なことです。


温度・湿度の変化が少ない、空調換気扇

  通常に生活しているときは計画換気だけで十分ですが、何人もが同時に喫煙したり、鍋料理などでガスを使ったりすれば当然、室内の空気は急激に汚れますから、計画換気システムで設定した以上の換気量が必要です。石油ストーブやガスストーブ、カセットコンロといった開放型の燃焼機器を長時間使うと酸欠、不完全燃焼、結露を発生する危険性もあります。このため、計画換気の設定以上の換気量が必要なときは、必ず窓を開け放ったり専用の換気扇を使わなければならないでしょう。

 ただ、通常の換気扇の場合は室内の温度や湿度が一気に変化してしまいますから、空調換気扇といって温度や湿度の変化が少ないタイプを使用することお勧めします。

 最近の住宅ではほぼ解決されているといわれていますが、それでもやっと取得したマイホームでの暮らしを始めたとたんに目や鼻がひりひりする、頭痛、めまい、吐き気がするといった症状の化学物質過敏症の被害にあうことがあります。これは、住宅に使われている建材や家具などから発生する揮発性有機化合物やダニ・カビによるアレルゲンが原因とされていますが、これを回避する簡単で有効な方法も、とにかく換気を十分にすることです。

 厄介なのが水蒸気対策です。人の息や汗、調理だけでなく、ガスストーブや石油ストーブからも水蒸気は発生しますが、この水蒸気は断熱性能の悪い箇所で結露が起こり、それが原因でアトピー性皮膚炎やアレルギーの原因とされるカビが発生します。また、結露は建物にとって大敵です。ただし、これも換気を十分行っていれば避けられます。

 何度もいいますが、高気密・高断熱住宅で快適な暮らをするためには、適切な換気が絶対条件なのです。


建物全体の温度が均一化する、オープンな間取り

 高気密・高断熱住宅は冷暖房効率が高い建物ですから、見方を変えると省エネ住宅だともいえます。夏は蒸し暑い外気の侵入を防いでくれるし、冬は室内の暖気を逃さないので少ない暖房でも十分暖めることができるからです。

 ただ、もうひと工夫すると効果はさらに上がります。例えば、冷房時には除湿機を併用するとそれほど室温を下げなくても涼しく感じるし、暖房時は逆に加湿器を併用すると室温を通常より2〜3度下げても暖かく感じます。また、湿度が高いときは室内の観葉植物を屋外に移し、低いときは反対に室内に持ち込むだけでも効果があります。これからの季節は、直射日光がまぶしい窓のカーテンを閉めるだけで効果があります。

 バリアフリー化が叫ばれていますが、実は最大のバリアは温度差です。このバリアを少なくできるのも高気密・高断熱住宅の特徴です。日本の住宅は閉める文化が根底にありますから、どうしても人がいる部屋だけを効率よく冷暖房しようと考えがちで、それが利点でもあります。ところが、一方で暑い部屋、寒い部屋が生まれる欠点があり、結露やカビの原因になってしまいます。温度差は、脳卒中や心筋梗塞になりやすという欠点もあります。そこで、せっかくの高気密・高断熱住宅ですから、思い気ってオープンな間取りにしてはどうでしょうか。ドアを開ける文化、つまり居間も廊下も階段もみんなつなげた広がりのある家です。欧米の住宅をみるまでもなく、オープンな間取りが多い北海道の住宅は、薪ストーブひとつで暖房するだけで建物全体の温度が均一になり快適です。

 断熱性能ということでチョット心配なのは、窓です。一般的な住宅では、窓にアルミサッシが使われていますが、アルミは耐候性に優れているものの熱伝導率がとても高いので断熱性に問題があります。ガラスも断熱性能がよくありません。そこで、最近は樹脂を挟み込んで断熱性能を改良したり、2枚のガラスの間に乾燥した空気やガスを封入したペアガラス仕様のサッシが増えていますが、それでも問題が完全に解決したわけではありませんから、カーテンや障子を追加することで断熱性能を改善してください。

住宅ジャーナリスト 斉藤良介


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